■著名人インタビュー
受験生にとって、日々の勉強の相棒とも言えるのが学習参考書です。そんな参考書の魅力を、出版社に勤める社員や編集者の視点で描いた学習参考書マンガ『ガクサン』(講談社)が、人気を集めています。連載のためにこれまで500冊以上の参考書を手に取ったという作者の佐原実波(みは)さんに、連載の裏話や参考書のトレンドなどを聞きました。(マンガ=佐原実波『ガクサン』〈講談社〉から)
『ガクサン』
佐原実波著、講談社刊。講談社のマンガ配信サイト「コミックDAYS」で連載中の『ガクサン』は、参考書出版社のお客様相談室に勤める主人公の茅野うるしと、自他共に認める「偏屈参考書オタク」の元編集者・福山譲が、SNSに寄せられる学習者のお悩みを、学習参考書を使って解決していく物語。作中では学習参考書づくりの舞台裏が描かれるとともに、実際に販売されている学習参考書も多数紹介されています。
ガクサン編集者は「職人」
――『ガクサン』は学習参考書を題材に、出版社に勤める社員の目線で描かれています。なぜ参考書をテーマに扱おうと思ったのでしょうか。
編集担当者からの提案です。私自身、学習参考書がテーマのマンガは見かけたことがなかったので、ぜひ描いてみたいと思いました。
私の前職は編集者なので、出版という仕事の流れや用語などは、ある程度は知っていました。ただ、私が作っていたのは学習参考書とはまったく違うジャンルの本だったため、取材で聞いた学習参考書業界の話はとても新鮮でした。
中でも印象的だったのが、学習参考書は内容だけでなく、書店に並べられたときの見え方、例えば表紙のデザインや色みなどにもさまざまなこだわりがあるということです。書店の参考書売り場では、定番の参考書やロングセラーのものが平積みにされがちなので、新しい参考書でも、書棚に並べられて目立たなくなってしまうことがあるそうです。買い手の目にとまりやすいように、背表紙のデザインや文字の入れ方にもさまざまな配慮がされていると聞き、驚きました。

――参考書も見た目が大切なんですね。
読者が長く使い続けることを想定して、紙の耐久性や製本の仕方を工夫するとか、暗記用の赤シートを使うことを想定して、シートで隠せる色のインクを使うとか。そういった工夫も、学習参考書業界ならではの視点だと思います。

また、従来の内容を残しながら、新しい学習指導要領や入試形式などに合わせて加筆・修正を行った「改訂版」が存在するのも参考書ならではです。何を残して、どこをどう新しくするのか。その辺りをしっかりと見極める必要もあります。それを知って、学習参考書の編集者の仕事は、どことなく職人的だなと思いました。

ガクサンで「平等な学び」を
――連載開始から3年以上になります。どのような思いで作品を描いていますか。
初めの頃は手探り状態でしたが、学習参考書を使った独学受験を取り上げた回は、私にとって、ひとつの転機になったと感じています。物語では、家庭環境などから生じる教育格差の問題に触れつつ、参考書は十分な教育機会が得られない子どもの希望にもなることを描きました。その頃から『ガクサン』を通じて、すべての子どもに平等な学びの機会を与えるという学習参考書の役割を、より多くの人に知ってもらいたいと考えるようになりました。
――作中には、さまざまな参考書が登場します。その紹介役を担う福山は、偏屈でぶっきらぼうな一方、参考書に関しては圧倒的な知識と愛情を持っているというユニークなキャラクターです。実際のモデルはいるのでしょうか。
さすがにあんなに失礼な人はいませんが(笑)、福山の参考書に対するマニアックな視点やストイックさ、ブレない信念を持ち続ける力といった部分については、実際にお会いした方々から感じたことをエッセンスとして取り入れています。

中高生の最大の悩みはスマホ
――物語に出てくる学習者のお悩みは、どのように選んでいるのでしょうか。
連載当初は知り合いの親子に取材をしたりしていましたが、そろそろ知り合いも尽きてきて(笑)、最近はSNS上から学習者のお悩みをピックアップして、「学習参考書なら、どのようなアプローチでこのお悩みを解決できるかな」と考えることが多いですね。

中高生の学習上のお悩みもさまざま見かけますが、一番大きいのは、作中でも取り上げたスマホとの付き合い方ではないかと思っています。今は、スマホさえあれば、マンガも動画も音楽も際限なく見たり聴いたりできますからね。今の子どもたちは、勉強に気持ちを向けるために、まずはスマホの誘惑に勝たなければならず、大変だと思います。
反響があった「理科の選択科目」
――ほかにも総合型選抜やリスニング学習の難しさなど、受験生に身近な話題が多く登場します。読者からの反響はいかがですか。
最近だと、理科の選択科目について取り上げた回の反響が大きかったです。物理、化学、地学、生物と選択肢が多いし、昔と比べると入試制度も複雑です。また、地学の授業を設置している高校は全国的にとても少ないようでもあり、どれを選べばいいのか、わからない高校生や保護者が多いのだと思います。
高校生向けのやさしい参考書が増加
――学習参考書にも、時代のトレンドはあるのでしょうか。
私にわかるのはここ数年に限ったことですが、高校生向けのやさしい参考書が増えていることですね。高校受験用の参考書は、教科書の内容を網羅できる平易なものが昔からの定番ですが、最近はそれと同じシリーズの高校生向けも多く出版されています。例えば、中学生向けからはじまったGakkenの「ひとつひとつわかりやすく。」シリーズなど、最近は高校生向けにも展開しています。苦手科目がある人は、こういった教科書の内容をしっかり学べる学習参考書を早めに利用するといいのではないでしょうか。

――スマホアプリやYouTubeなど学習の手段が多様化しても、やはり学習参考書は中高生にとって頼りになる存在なんですね。
物理や化学など、動画で解説されたほうがわかりやすい科目もありますが、英語や歴史などは「わざわざ動画じゃなくてもいい」と感じる人もいると思います。動画はどこで何の話がされているのか、数十分通しで視聴しないとわからなかったり、自分が視聴したいポイントを巻き戻しや早送りで探すのが難しかったりしますが、学習参考書は目次を見れば内容は一目瞭然ですからね。今の高校生は、英単語は紙の参考書に書き込みながら覚えて、記憶のチェックはアプリの小テスト機能を利用するというように、それぞれのいいところをうまく使い分けているようです。
<プロフィル>
佐原実波(さはら・みは)/マンガ家。神奈川県出身。2021年から、講談社の青年マンガ誌「モーニング」で、学習参考書をテーマにしたコメディ『ガクサン』を連載開始。2022年からは同社のマンガ配信サイト「コミックDAYS」で連載中。
>>「はじめに」のページは必ず読め! 学習参考書マンガ『ガクサン』作者が教える、自分に合った参考書選び【後編】
>>1巻ためし読みはこちら
(文=木下昌子、マンガ=佐原実波〈ガクサン〉講談社から)
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