大学入試における学部の志望動向は社会の動きを反映していると言われます。2023年度はどのような傾向が見られたのでしょうか。塾・予備校の専門家に聞きました。(写真=大学入学共通テストの試験会場へ向かう受験生たち 2023年1月14日、東京都文京区の東京大/朝日新聞社)
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2023年度大学入試の志望傾向については、「文系では経済学部や経営学部、商学部といった経済系の学部の人気が復活している」というのが専門家たちの共通した見解です。河合塾教育研究開発本部主席研究員の近藤治さんは、「新型コロナウイルス感染症による経済への影響が落ち着き、だんだんと回復してきたことが大きいでしょう」と話します。

前年度に人気が高かったのは、法学部でした。
「22年度入試の受験生が志願先を考えていた21年は、コロナの流行がどうなるかを含め、先行きが見通せなかった時期です。このため、安定志向で、公務員試験をはじめとした資格試験に強い学部である法学部に人気が集まったと考えられます。このように学部の志望動向は社会の動向を反映しています」(河合塾・近藤さん)
理系は医学部、薬学部が安定した人気
代々木ゼミナール教育事業管理本部本部長の佐藤雄太郎さんは、「キャリアデザインや起業を学べるプログラムがあり、データを活用した学問が学べる経済系の学部がある大学の志望者が増えている印象を受けます」と話します。
コロナの感染拡大をきっかけに志望者が減っていた外国語や国際関係系の学部も、やや回復しています。
「外国語や国際関係系の学部を志望する学生は、在学中に海外留学をしたいと希望する人が多い。各国のコロナ対策も緩和してきており、ようやく留学がしやすくなったので、24年度以降、受験者は増えていくと思います」(代々木ゼミナール・佐藤さん)
理系は医学部と薬学部が安定した人気で、22年度よりも志願者が増えています。
「人気があるのは医学部で、国公立大・私立大ともに志願者が多いです。また、国公立大・私立大ともに薬学部の人気も高いです。コロナ関連のニュースでは新薬の開発に関するものも多かったので、その影響もあるのではないでしょうか」(同)
駿台予備学校進学情報事業部部長の石原賢一さんは、医学部の志願者数に注目します。
「医学部はもともと定員の少ない学部です。加えて23年度は岐阜大が後期試験を廃止するなど、国公立大では一般選抜の定員がさらに減っています。ところが、全体の志願者は増えています」
最難関と言われる東大の理科三類の第1段階選抜は、23年度入試から倍率を3.0倍に絞ることが予告されていました(22年度は3.5倍)。それにもかかわらず、志願者数の大きな減少は見られませんでした。
「共通テストの平均点が上昇したこともありますが、国公立大医学部をめざす成績上位層は、条件が厳しくなっても、果敢に上の大学を目指そうとする意欲的な受験生が多いといえるのではないでしょうか」(駿台予備学校・石原さん)
女子受験生は工学部や理学部、経済系学部などあらゆる学部で増加
女子の志望動向にも変化が見られます。
「女子は理系の志望者が増えているのですが、医学部や獣医学部だけでなく、工学部や理学部、中でも電気・電子や応用化学、農学部の志望者も軒並み増えています。文系も法・政治や経済系学部が増加しています。女子受験者が幅広い視野で職業選択を考えるようになってきたと見ています」(河合塾・近藤さん)

代々木ゼミナール・佐藤さんは農学系の学部に注目します。
「ここ3年ほど、女子に人気がじわじわ出てきています。国公立大だけでなく、私立大の農学系も人気で、ここ数年は食糧危機やSDGsをテーマにした授業のあるところが増えています。ロシアのウクライナ侵攻で食糧危機の問題が連日、報道されており、こうした影響がきっかけになった受験生も多いのかもしれません」
興味のあることから学部を選ぶ
一方、受験生の中には、「行きたい学部がない」「学びたいことが見つからない」と悩んでいる人もいるようです。そのような時、親はどうすればいいのでしょうか。河合塾・近藤さんは次のようにアドバイスをします。
「医学部や看護など医療系の学部、薬学部、福祉系の学部などを除くと、多くの学部は卒業後にどのような仕事につながるかが想像しづらいと思います。親御さんには、ご自身の仕事はもちろん、友人の仕事についても、出身学部と絡めていろいろと話をしてあげるといいと思います」
駿台予備学校・石原さんは、「将来の仕事から学部を決めるよりは、今、好きなこと、興味のあることから選んでみては」と話します。
「大学は学びや物事を考えるプロセスを身につけるところであり、一部の学部を除いて、仕事に直接つながるものではありません。今は社会の変化が激しく、大学で学んだことも卒業後何十年も先までは使えないでしょう」
社会の変化に最も敏感なのは、社会で様々な仕事をしている親のはずです。子どもが興味のある分野を大事にして、どんな大学でどんな学びができるのか、親子で話し合ってみるのがいいのではないでしょうか。
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