3回目となった2023年度大学入学共通テスト。今年度の出題傾向や問題分量は、前年度に比べて変化したのでしょうか。塾・予備校の専門家が分析しました。(写真=共通テストの試験開始を待つ受験生たち 2023年1月14日、東京都文京区の東京大/朝日新聞社)
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2023年度の共通テストは1月14、15日の2日間にわたって行われ、追試験も合わせると47万4051人が受験しました。受験者数は昨年度の48万8384人から1万4333人減っていますが、河合塾教育研究開発本部主席研究員の近藤治さんは「23年春の高校卒業見込み者は前年と比べて3%ほど減少する見込みで、共通テスト志願者数や受験者数の減少はこれに伴うものと考えていいでしょう」と話します。

共通テスト開始から3年間で2回もの得点調整
試験内容はどうだったのでしょうか。22年度は数学の平均点が大きくダウンし、「数学ショック」などと言われました。今年度は対照的に「数学Ⅰ・数学A」「数学Ⅱ・数学B」が易しくなり、平均点は昨年度と比べて17~18点も上がりました。

一方で、理科は生物の平均点が2年連続で過去最低となり、物理と差がついたため、得点調整が行われました。得点調整は、同じ教科の選択科目間で20点以上の平均点差が生じ、これが試験問題の難易差に基づくものと認められた場合に行われます。21年度の共通テストでも、公民(倫理と政治・経済の間)と理科(生物と化学の間)で実施されました。代々木ゼミナール教育事業管理本部本部長の佐藤雄太郎さんは、「理科は得点調整が共通テスト開始から2回あり、難易度調整が難しい教科のひとつになってきています」と話します。
駿台予備学校進学情報事業部部長の石原賢一さんは、ほかに難化傾向の科目として、「英語リーディング」「世界史B」「政治・経済」「倫理、政治・経済」を挙げます。
「英語のリーディングでは、記述内容の順序を扱う問題や、プレゼンテーションスライドを完成させる問題が出題されました。多面的な情報処理を細部まで必要とする問題が増えました」
思考力などを問う出題傾向が続く
共通テストの出題傾向については、「前年と変わっていない」というのが専門家たちの共通した意見です。知識の理解度を問うものや、思考力・判断力を発揮して解くことを求められる問題となっており、文章や統計、模式図など多くの資料から考察力や思考力を問われています。
「とはいえ、膨大な暗記量は必要とせず、思考力があれば解ける問題になっています。成績上位層からは『センター試験よりも易しくなった』という声が多く聞かれます」(駿台・石原さん)
また、受験生が共通テストに慣れてきた面も見られるようです。英語のうち、リスニングの平均点は22年度の59.45点から、62.35点に上がっています。
「リスニングの難度は大きく変わっていないので、平均点がこれだけ上がったのは、受験生が対応できるようになった証しでしょう。02年以降、ALT(外国語指導助手)などを迎えて小学校の授業の中で英語に触れる機会が設けられてきました。各種の英語検定を受験する生徒も増えており、こうした長年の成果が出てきていると考えられます」(同)
文章量増加も、教科の知識が定着していることが重要
「共通テストの問題の文章量が多すぎるのではないか」という指摘が出ているように、23年度は文章量がさらに増加しました。
「場面設定のために、会話文の多用や複数の資料の提示をしているためです。特に国語、世界史B、数学Ⅰ・数学A、物理などは、22年度に比べて4ページ増えています。多くの受験生にとっては、読み解く作業が負担になったと思います」(河合塾・近藤さん)
膨大な問題文を読み解くためには、国語力が必要ですが、代々木ゼミナール・佐藤さんは、「文章量の多さを攻略するためには読解力だけではなく、多くの知識を定着させることが大事」と言います。
「問題文の中に出てくる解説的な文章は、その教科で必要な知識があれば読み飛ばすことができるものが多い。例えば『豊臣秀吉は〇〇を行った人で……』と書いてあっても、多くの人はこの部分を熟読したりしませんよね。知識が定着している受験生であれば、問題文の量が増えても時間が足りないということはないはずです」
共通テストで点数を取るためには、まずは基礎となる知識をしっかりと定着させた上で、日常的に多くの文章や資料を読む習慣をつけることが必要です。
ただ、共通テストでは、長い文章の中からポイントを見極め、高速で処理する力が問われているのは事実です。高い読解力も必要ですが、表層的な情報処理能力が必要とされています。知識は、内容を高速で処理するために必要な材料ととらえておきましょう。
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