■先輩パパ・ママの受験体験記(親子編)
三上涼子さんの長女、莉奈さん(いずれも仮名)は、総合型選抜で桜美林大学芸術文化学群に合格し、2025年春から大学生になりました。大学でも大好きな演劇を学びたいと、自ら進路を選んだ莉奈さん。総合型選抜には詳しくなかった母は、娘をどのように支えたのでしょうか。合格までの道のりを、親子で振り返ってもらいました。(イラスト=Michiko Nishikawa)
大学で演劇を学びたい
――大学の進路はいつごろから考えましたか。
莉奈さん 高校に入学した頃から、演劇が学べる大学に進学したいと思い、舞台系の学部がある大学のオープンキャンパスに行ったり、ネットで探したりしていました。桜美林大学の芸術文化学群は、実技の授業も充実していて、演劇だけでなく音楽やダンス、照明や音響など幅広く学べることを知り、自分の学びたい内容に合致していると感じました。
――なぜ、演劇を学びたいと思ったのですか。
莉奈さん 小学3年生の時、母が私に内緒で応募した「横浜市民ミュージカル」のオーディションに受かって舞台に立ちました。この時の舞台体験がとても楽しかったのです。これがきっかけで市民ミュージカルに参加するようになり、将来はミュージカル俳優になりたいという夢ができて、大学でも演劇を学びたいと思うようになりました。
涼子さん 小さい頃は引っ込み思案で、バレエの発表会でも友達の後ろに隠れてしまうような子でした。ミュージカルなら、踊りや歌もあって、娘がもっと積極的になれるのではないかと思ったのです。出演者には若い方から80代の方までいて、皆さんから学ぶことが多かったようです。コミュニケーションも豊かになりました。
オープンキャンパスに何度も参加
――お母様は莉奈さんの大学選択に賛成だったのですか。
涼子さん 自分の人生なので、何か目標に向かう過程で大学を決めてくれればいいと思っていました。途中でつらいことや嫌なことがあっても、自分で決めたことなら、乗り越えられます。視野を広げるためにも、大学には行ってほしいと思っていました。
――総合型選抜で受験しようと決めたのはいつですか。
莉奈さん 高校の先生は私が舞台に立っていることを知っていたので、1年生の時から「学外で活動していることが多いから、総合型選抜で受験するのがいい」と勧めてくれました。私自身も一般選抜の受験勉強をするよりは、好きなことで頑張りたいと思いました。高校は選択授業が多かったので、総合型選抜で役に立つような小論文の授業を取ったり、定期テストも安定した点数を取れるように集中して勉強したりしていました。
――受験の準備はいつ頃から始めましたか。
莉奈さん 高2の3月ごろに、桜美林大学のオープンキャンパスに行きました。その後も桜美林大学が高校生向けに開講している「ディスカバ!」というキャリア支援プロジェクトの演劇やダンス、ミュージカルのワークショップに参加しました。それらの中には、参加すると芸術文化学群の演劇・ダンス専修、音楽専修の総合型選抜1次審査が免除される特典が付いているものもあり、どうしても合格したかった私は何度も参加しました。
特に2日間かけて行われた「ミュージカル・ワークショップ」は、総合型選抜の1次審査免除がかかっていたので、真剣に取り組みました。1日目は歌やダンス、演技を習って、2日目に復習してそれを発表するという内容で、とても楽しかったです。ワークショップは入試本番の実技の練習にもなったので、参加してよかったと思います。
――受験勉強はどんなことをしていましたか。
莉奈さん 高校の先生にお願いして面接の練習をしました。どんな質問をされるのかわからなかったので、過去の面接内容を調べて練習しました。通塾も考えましたが、公演とぶつかってしまい、結局、通えませんでした。総合型選抜は成績が考慮される場合もあるので、とにかく成績を下げないように頑張りました。私の場合は舞台があったので、出席日数を減らさないことが一番大変でした。
本番は実技とグループ面接
――実際の総合型選抜はどのような試験内容でしたか。
莉奈さん 総合型選抜には何種類か選抜方法があり、私は書類審査、実技、面接が評価される総合評価方式で受験しました。1次審査免除の特典を持っていましたが、総合評価方式は3回まで受けることができるので、まずは特典を使わず、普通に受験しました。実技では、その場で8人のグループになり、与えられたテーマで芝居を作って演じました。持ち時間は40分。その中で話し合いをして、内容を決めて練習、発表まで仕上げます。私たちのグループは時間がかかりすぎて、1回合わせただけで発表になってしまいました。でも、お芝居の出来不出来よりも、その過程を見られていたようです。
私自身は、あまり出しゃばらずにみんなをつなげたり、方向が定まらない場合は自分の意見も入れつつ軌道修正したりすることに力を入れました。それがよかったのかなと思っています。受験は1回目のチャレンジで合格することができました。
――面接ではどんなことを聞かれましたか。
莉奈さん グループ面接で、挙手制で質問に答えました。「演劇の養成所や専門学校ではなく、なぜ大学なのか」「今まで生きてきて失敗した経験、楽しかったことは何か」「演劇はなぜ存在するのか」といったことを聞かれました。過去の面接の質問と同じような内容だったので、練習が役立ちました。
――ご両親は、莉奈さんが演劇を学べる大学を選択し、その道に進もうとしていることをどう思っていましたか。
涼子さん ずっと子どもの夢を応援したいと思ってきました。夫も同じ思いです。今では夫までミュージカルに夢中になって、一緒に舞台に立つようになってしまいました(笑)。これからも2人で娘の夢を応援していきたいと思っています。
口を出さず、いつも通りに過ごす
――受験を通じて、親としてはどんなサポートをしましたか。
涼子さん オープンキャンパスには一度だけ一緒に行きましたが、あとは願書の取り寄せから出願まで、すべて本人がしました。一般選抜を受けないことが心配でしたが、本人が桜美林大学一択で、総合型選抜で受けたいという強い気持ちがあったので、任せました。それにアドバイスしようにも、私たちには総合型選抜そのものがよく理解できていませんでした。ですから、手伝ったのは書類の最終チェックや、お金関係のことくらいです。
あとは「受験が終わったら、おいしいものでも食べに行こうね」と声をかけていました。受験当日も特別なお弁当は作らず、「行ってらっしゃい」といつも通り、送り出しました。
莉奈さん 心のどこかで母に総合型選抜のことを説明しても無駄なような気がしていたのかもしれません(笑)。だから全部、自分でやりました。出願の時も、オープンキャンパスで知り合った友達と電話で相談しながら準備しました。両親は私に何も言わずに任せてくれて、いつも通りに過ごさせてくれたのがうれしかったです。
――最後に高校生と保護者にメッセージをお願いします。
莉奈さん 私自身は早くから第1志望を決めていたので、オープンキャンパスは数校しか行きませんでしたが、志望校が決まるまではいろいろな大学のオープンキャンパスに行ったほうがいいと思います。自分の目で確かめないとわからないこともあるからです。
そしてできることは早め早めに終わらせることです。私は出願の1週間前まで舞台があり、提出する書類を全部後回しにしてしまいました。1600字の自己PRは文の構成を考えるところから始めたので、苦労しました。高校の先生にも心配をかけてしまいました。時間を見つけて早めにやっておけばよかったと反省しています。
涼子さん 受験だけではないですが、あまり口を出さないで本人に考えさせ、任せてよかったと思います。ただ、本人のSOSのサインだけは見逃さないように心がけていました。受験前はあせりと不安もあったのか涙を見せることもありました。未熟な親だけにそばで見守ることしかできませんでしたが、結果的に自分の夢に向かってスタートラインに立ててよかったと思いました。これからも支えていけたら私もうれしいです。
(文=柿崎明子)
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